高齢者に多いとされる4大骨折について
皆様こんにちは。西宮市、夙川グリーンプレイス、藤本整形外科循環器内科クリニック、理学療法士の泉本です。
雪が降るような寒い日が続いていますね。体調は崩されてはいないでしょうか。
当院は整形外科を標榜しており「骨折」をした患者様や手術後の患者様に対してリハビリテーションを行います。骨折部位は上肢、下肢の骨など様々ですが、高齢者においては多いとされる骨折箇所が知られています。
①上腕骨近位端骨折
若年者ではスポーツや交通事故などの強い外力によって生じることが多いです。 高齢者では転倒で生じることが多く、大腿骨近位部骨折(股関節)、橈骨遠位端骨折(手関節)、脊椎圧迫骨折と並んで高齢者に多い骨折の一つです。50歳以降は加齢とともに漸増し60歳以上の女性で頻度が高いとされています。
②橈骨遠位端骨折
転倒の際に床面や地面に手掌面をついて、橈骨末端部に受ける長軸上の圧と背屈強制(手の甲側に曲がる動き)によって手関節から2~3㎝近位部に定型的な骨折が起こります。骨片は背側(手の甲側)に転位しフォーク状の変形となります。
③大腿骨近位部骨折
転倒によって直接、大転子部(大腿骨近位部の出っ張った箇所)を強打したり、膝をついて大腿を捻った際に生じることが多い骨折です。バランス、筋力の低下が顕著な高齢者では上手に受け身をとれず大腿骨転子部に直接外力が加わり受傷することがあります。女性の方が男性の2,5倍~2,6倍多いとされています。
④腰椎圧迫骨折
骨粗鬆症で脆弱になった高齢者の脊椎は「尻もち」をつくような転倒で椎体の圧迫骨折が起こります。高度な骨密度低下であれば物を持ち上げる動作でも生じてしまうこともあります。腰背部痛や円背変形、骨片が脊髄神経まで影響を及ぼすと下肢の麻痺が生じる場合もあります。
これら骨折は多くの場合「転倒」が原因です。高齢者では全体的な身体機能低下に伴って歩行能力が落ちています。特徴としては①歩行時につま先がしっかりあがらず、小さな段差でも躓きやすくなる②平衡感覚が低下しバランスを崩しやすくなる③崩れたバランスを回復させる能力が低下している ことなどが上げられます。
感染症流行により直近3年間で行動範囲が限られ筋力の低下や骨自体も弱くなっている方(骨粗鬆症:女性に多い)は多いと思われます。
転倒リスクが高い場所として浴室や階段などが想像しやすいです。しかし、実際は自宅内の様々な場所での転倒も多いとされています。身体の重心位置が大きく動く立ち上がりや着座動作、片足立ちが必要な靴下を履く、ズボンを履く場面では特に注意が必要です。
高齢者の骨折で最も多いのは脊椎圧迫骨折でそれに次ぐのは大腿骨頸部骨折といわれています。手術を無事終えても疼痛や転倒恐怖によって長期臥床が必要なケースもあり全身の機能低下につながりやすいです。さらに悪いケースでは車いす生活になったり、筋力低下や痛みが残り歩行に影響することもあります。
「骨折」後、動作能力が回復したとしも骨折前の生活からは一つレベルが下がった状態の動作レベルになる恐れがあります。身体機能を維持することや環境を設定して転倒防止を目標にすることは元気で過ごすためにはとても大切です。適度な運動、カルシウムを多く含む食物摂取(牛乳、チーズ、大豆、小魚、海藻類)がこれらの予防につながります。元気で健やかに動ける「健康寿命」の延伸は寿命が長くなった現在の人々には重要な課題となっています。自身の身体づくりに着目していくことは生活の質を保ち続けるには必須と思われます。